各国立大学が2004年に国立大学法人に移行して以来,学長の権限強化と様々な
規制緩和により国立大学の経営も質的に大きな変化を遂げている.その一方で大学
事務職員の仕事量は法人化前と比べて飛躍的に増えていると言われることが多い.
しかし,そのことを定量的に示すデータが得られていないのも事実である.事務職員の
仕事量を定量的に評価するための方法論について調査し,様々な角度から検討すること
も監事として重要な役割ではないだろうか.
法人化された大学には,国民の付託に応えることがより明確に求められている.
組織運営を担う執行部はもとより,教員,事務職員においても任務遂行の一体性をより
強くして,大学の本業である教育と研究を磨き,その力を最大化していく意識の共有は不可欠である.
職員の働き方にも質的な変化が見られる.大学が職員に対して求める仕事について,
従来の定型的な受け身の仕事から,課題解決の実現に貢献できる能力を身に着けることに
よって大学運営の一翼を担う高度な仕事へと変化しつつある.このような高度な能力の
獲得のために,従来と違って教職協働の取り組みとして事務職員に重要な委員会の
委員として参加させ,大学の目標・戦略の原案を作成させるなどして主体的に経験する機会を
増やしている大学も多い.
デジタル革命も大きな変革をもたらしている.今ではコンピュータを使いこなせない
事務職員はいない.日々の業務の中でもワード,エクセル,パワーポイントを使い
こなせることは必須の能力と考えられている.今や各種の申請書を作成するのに,
企画力に加えて,確かな表現技術のほかに高度な芸術的センスも必要となっている.
パワーポイントで表現できない場合にはアドビ社のイラストレータも使う必要がある.
その意味でスタッフ・ディベロップメントSDが重要さを増してきている.さらに最近では
コロナ禍により,DXの活用は必須のものとなり,教職員のみならず学生もDX技術に精通
することが生き残りの条件となってきているようにさえ思える.近年の労働関係法令の
改正や労働力人口の減少を踏まえ、定年後の再雇用者の活躍推進や期間を定めて雇用する
契約職員の戦力化など新たな取り組みが必要となっている.
本研究会の目的は,国立大学の経営を支える職員力の向上について会員相互に意見を
交換するだけでなく,様々な外部講師を招くことにより議論を深めることである.